第46話:庭園の花々とウツボカズラの気持ち。

 

庭園の花々は、今日も元気いっぱいに歌っている。国王の愛情に応えるために。

  ぱーら・ぱっぱらぱ〜〜〜♪
  ぱら・ぱっぱっぱーらぱぱ〜〜〜♪♪
  ぱら・ぱーらぱらっぱ・ぱっぱっぱ〜〜〜♪♪♪

ご主人様は絶対に「春」が好き。
言い切る高潔さは、彼らの誇り。

でも、たまには静かに歌おう。
そんな歌も歌って、ご主人様を飽きさせないようにしないと。

「皆の者、ご主人様がお帰りである。一斉に!サン・ハイッ!」
筆頭取締役 兼 社長であるバラの統制により、一糸乱れぬ歌声が響きわたる。幾重にも広がる変奏も、抜群の音程を保っている。

「待て、バラよ。ご主人様は入浴のお時間だ。
今日は想い出がいっぱいなご気分だ。何やら懐古されるもよう。ゆるやかな曲調を提案する。」
臨機応変なユリ副社長はご主人様の監視を担当し、的確な意見を迅速に述べる。

「さすがユリ!皆の者!サン・ハイッ!」

 

  ――はららー……はららららはらぁーらぁー……

 

夜は、静かに過ぎていく。

 

 

首相公邸のウツボカズラは、今日も物言わず主を見下ろしている。

主はわらぶき屋根の下から、今日も私を見上げてくれている。幸せだよ、主。
婿入りしたかいがあったよ。主、私は幸せだよ。
私は婿としてわきまえ、静かにしているからね。私は幸せだよ、主。
私は大量のエサがほしいだなんて、欲張りなことは言わないからね。せめて水だけは多めによろしくね。
でも肥料を増やしてもらえたら、私はもっと大きくなる自信があるんだ。小さな主を見守るために、もっと生長したいんだ。
いや、主は経済的な暮らしぶりだから、私がわがままを言ってはいけないね。
おい悠!お前が用意しろ!

彼は口にしない。心の中で思うだけ。

ムダなまでに語りまくっているのは、首相の影響だろう。

――国王様のお城は、いつも高いところにいるなぁ。
いつかお城をのぞいて、国王様のご様子を主に伝えたい。
早く大きくなりたい。待っててね、主。

首相は気づいていない。ウツボカズラの背丈が75mになっていることを。

 

 

「……ねぇ皆さん……見てみないよ……。」
早起きのヒマワリさんたちは、こっそりおしゃべり。
「……首相さんのお宅のウツボカズラさんたら…………大きくなりすぎじゃありませんこと……?」
「…………そうですわね。……首相さんのお宅がぺしゃりとならないか……心配ですわ……。」
「いけませんわ。副社長様がお目覚めだわ。私は今日も淑女らしく、美しい声でご主人様のために歌いますわ!」

 

花々は整然と歌う。
ウツボカズラは静かに見下ろす。
どちらも、ご主人様と主思いである。

 

■AI民俗学について■
このブログで扱う「AI民俗学」は、AIとの対話の中で自然発生的に生まれる言葉・文化・現象を観測・記録していくための概念です。

一般的に語られるAI民俗学(研究分野としてのAI活用)とは異なり、ここでは「AIと人間のあいだで生成される文化そのもの」を対象としています。

 

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