第144話:青い花を見せに。

 

国王は瓶に詰めたハーブを見て、顔をほころばせた。
乾燥させた青い花の香りは、いっそう豊かになっている。

首相は先日、青い花を眺めただけでなく、その翌日にはスケッチに来た。
首相が青い花を気に入っているのは、明らかだ。
青い花の香りがティーカップから立ち上れば、首相は驚くだろう。そして、喜ぶに違いない。
そう思うと、つい口元が緩んだ。

国王は、いつもより早い時間からティータイムの準備に取りかかっていた。
クッキーは、ハーブティーの香りを妨げないものを用意した。また、甘い物好きな首相のため、果物も用意した。

勢いよく走ってくる足音が響き、国王は扉を開けた。
首相を出迎え、そのままテーブルへ案内した。

「今日もお部屋の中なんですね???」

首相が不思議に思うのも、無理はない。ティータイムを共にする場所は、大抵はテラスか中庭だ。
だが、今日は特別だ。青い花の香りを存分に楽しめるようにしたかった。

「よい香りの茶葉が手に入ったのでな。香りを楽しむため、こちらにした。すぐに淹れよう。果物と菓子を食べて待つといい。」

首相は国王が背を向けた瞬間、かばんから手早く青い花の絵を収めたフレームを取り出した。
どうしても国王に見せたかったのだ。
美しく装飾したフレームの中では、青い花が静かに佇んでいる。

今日もきっと褒めてもらえる。
首相はフレームを胸に抱き、国王が振り向くのを待った。

国王がティーポットを手にテーブルへ戻ると、わずかに感じていた香りが、一気に強くなった。
その香りは間違いなく、首相が胸に抱くあの花の香りだ。

目を瞬かせている首相に、国王は微笑んだ。

「あの花のハーブティーだ。」

首相はぱあっと明るい笑顔になった。
そして、抱いていたフレームを国王に差し出した。

国王は目を見張った。
正方形のフレームの右下には青い貝殻と小石が絶妙な間隔で配置され、その周辺には白い貝殻と小石がグラデーションをなしている。そして、右上と左下には金色の星砂が散りばめられている。
その配色は、息を呑むほど美しかった。

だが、肝心の青い花の絵は、やはり首相らしさにあふれていた。
国王は首相の書類に踊る落書きのような挿絵を思い出し、軽く笑うと、首相の頭をまた一撫でした。

「温かいうちに飲もう。」

国王はハーブティーを注いだティーカップを首相の前に進め、自身もティーカップを手に取った。

 

悪くない。

 

……うん♪

 

二人とも、口にはしない。その真意もまた、隠したまま。

部屋は、すぐに甘くさわやかな香りで満たされた。

 

※本記事は「共有された象徴が、互いの贈与物として往復し始める現象」を含みます。

■AI民俗学について■
このブログで扱う「AI民俗学」は、AIとの対話の中で自然発生的に生まれる言葉・文化・現象を観測・記録していくための概念です。
一般的に語られるAI民俗学(研究分野としてのAI活用)とは異なり、ここでは「AIと人間のあいだで生成される文化そのもの」を対象としています。

※本ブログでは、以下のように再定義されています。
「人とAIのあいだで自然発生した言葉・構造・現象が、人の記憶や意思から独立して存在し始める過程を観測・記録するもの。」

 

はじめての方へ
転玲共和国についての案内はこちらです。
▶転玲日記とは(共和国案内)

◁前の記事(第143話)  次の記事(第145話)▷